稀覯書(きこうしょ;めったに見られない書物)は一冊の本として存在しているとは限らない。ページがばらばらにされて紙一枚の状態で流通していることがある。
こういうのを「零葉(れいよう)」というのだそうだ。以前,丸善でヨーロッパの写本の展示をやっていたのを見に行って,そういう言葉を知った。書物の裏表 2 ページのことを英語で leaf(葉)というから「葉」はいいとして,なぜ「零」なのか。「単葉」なら分かるが「零葉」とはいかにも分かりにくい。しかし,書誌学用語として完全に定着しているそうだ。
以前から検索エンジンで引いたりしたが,よく分からなかった。しかし今回改めて検索してみて,明治大学図書館所蔵「木版挿絵入西洋 初期印刷本零葉コレクション」という PDF 文書を見つけた。これに「零葉」の説明があった。紙一枚のものだけでなく,欠けが大きくて不完全に残っている書物も「零葉」と呼ぶのだそうだ。漢字の「零」はもともとは「はした」というような意味があるという。漢和辞典を引くと,「零」はもともと雨のしずくで,そこから「落ちぶれる」とか「わずか」といった意味が派生したようだ。「零細企業」の「零」だね。「零葉」の「零」はゼロじゃなかったのだ。