2008年12月12日金曜日

オフセット印刷の意味範囲

現在,商業印刷の多くは「平版オフセット印刷」という方式で刷られている。

この言葉は,平版という版式を用い,オフセット方式で紙に転写することを意味している。

平版は,平らな版上に親水性の部分と親油性の部分を形成し,親水性部分に水の皮膜を作って親油性の部分のみにインキ像を形成する方式だ。石版印刷(リトグラフ)も平版の一種。

そして,オフセット方式は,ブランケット胴と呼ばれる,ゴムを引いた円筒に版のインキ画像を転写し,それをさらに紙などの被印刷体に転写する方式をいう。

したがって,オフセットだからといって版式が平版とは限らない。実際,ドライオフセットとかレターセットと呼ばれる凸版オフセット印刷もかつてあった。

現在,平版印刷はオフセット方式を使うし,平版印刷以外では特定の分野を除けばオフセット方式は使われていない。そこで,平版オフセット印刷を単に「オフセット印刷」と呼んでいる。まず誤解の余地はなく,ふだんの会話でこのような言葉づかいをするのはもちろん問題ない。

しかし,用語辞典や印刷技術の解説書などでは,やはり平版とオフセットの本来の意味をまず説明するべきだろう。版式の解説でいきなり「凸版・凹版・オフセット・孔版」などと書いてあるのを見ると,首を傾げてしまう。オフセットは版式ではないのだ。

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