2008年12月15日月曜日

科学の本の質

「科学の本質」じゃなくて,科学の書籍のクオリティーの話ね。

学生の頃,定年も近くなった指導教官が遠い目でこう仰ったのを今でも覚えている。

ボクらの年代以降の人は・・・本をまじめに書かなくなったから・・・君たちは,ある意味・・・不幸だ。

果たして著者の年代でそう割り切れるものかどうかは分からないが,昔,本当にまじめに本を書いてくれる先生方がいたこと,そして現在,あまりまじめに本を書かない先生方が少なくないことは確かだ。長い間,科学の本から遠ざかっているので最近のことは分からないが,学生時代の記憶を辿ってみる。

書店の数学のコーナーに行くと,線形代数と微分積分の本がたくさんある。なぜたくさんあるかは分かりきっているから書かない。これらのうち,既存のものを越えようと志した本がどれほどあるのか。

まじめな本づくりで私も評価しているある著名出版社から「基礎なんとかシリーズ」なんていうのが出る。執筆陣も豪華。意気込んだ企画におお!と思い,興味のある巻を何千円も出して買う。読んでも分からない。頭が悪いせいだとがっかりする。何度か挑戦するがやっぱりよく分からない。何年も経って,その本を理解する素地が整ってくると,頭のせいだけではなかったことが見えてくる。著者に書く力が無いのだ。そしておそらくは片手間に書いている。

良い本に出会った人の中から良い本を書く人が現れる。良い本に出会えなかった人が良い本を書くのは難しい。いま良い本を作って世に出すことは,次の次の世代のためにとても大切なことなのだ。


0 件のコメント: